このページは研究室を選ぶ学生の皆さん向けに作成しました。
1. どんな研究をするの?
「音声対話システム」の研究をします。
音声対話システムとは、音声認識技術を用いて、人と対話するシステムのことです。 音声認識とは、人間の声を入力として、それをテキストに変換する技術のことです Siri (Apple)など、スマートフォン上のアプリを使ったことがある人もいるでしょう。 Amazon AlexaやGoogle Homeなどのスマートスピーカーも世の中で広く使われています。
本研究室では、音声認識技術や自然言語処理技術を使って、実際に新しい音声対話システムを構築したり、そこでの問題を解決する要素技術を開発したりします。 音声認識では誤りが避けられません。特に、人間は音だけを聞いているのではなく、視覚を同時に使っていたり、様々な背景知識を持っていたりするので、雑音があってもうまく聞き分けられます。 一方システムでは、音声認識性能は向上してきたとは言え、周辺状況の認識能力や知識が不足していて、人間ではあり得ない間違いをします。 このように、実環境で動く音声対話システムを作るのはまだまだ難しく、取組み甲斐のある課題です。やればやるほど、人間が、いかに何気なく、高度な処理をしているのかがわかります。
また、対話システムには知識が必須です。単に入力に対する出力の写像として対話を捉えるのではなく、 既存の知識をうまく使ったり、さらには対話中に相手からうまく知識を得てシステムが自律的に成長するという 機能も、「賢い」対話システムにはきっと必須になります。 さらには、それを対話の流れを途切れさせず、また相手の心象を悪化させないように尋ねる技術も必要です。
以上のように、プログラムを書いてシステムを作るという工学的な部分と、「話が通じる」とはどういうことかを考えるようなサイエンスの部分の両面を持った研究分野です。 さらに、人間が使う言葉を扱うことから、言語学や社会心理学などの知見にも触れる必要があります。 「人と話が通じるというのはどういうことか」に興味がある皆さん、是非一緒に研究をしませんか?
なお、前任校での学生が作ってくれた、人型ロボットを使ったシステムのデモビデオを以下に載せています。 まだ不自然な部分が多々ありますが、これがどう不自然なのか分析的に考えてみたあなた、もっと自然なシステムを作ってみたいというあなた、是非一緒に研究しましょう。
新聞報道
2017年12月に行った産研定例記者会見の内容が報道されました。
- http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2017/20171221_1
- http://www.sankei.com/west/news/171223/wst1712230007-n1.html
- https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-12/ou-tta122417.php など
2020年10月にも定例記者会見で発表し、関連する内容を報道していただきました。
- https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20201020_3
- https://eurekalert.org/pub_releases/2020-10/ou-hdf102220.php
- https://www.asahi.com/articles/ASNDX4RZDNDRPLBJ004.html など
夢ナビ
2014年夏に、夢ナビという高校生向けWebサイトに、研究紹介記事を掲載していただきました。高校生向けなので、一般の方にもわかりやすいと思います。
2015年6月に,夢ナビLIVEというイベントで,高校生向けに講義をしました。
3分のショートトーク(夢ナビTALK)はYouTubeにも上がっています。
2. どんなスキルが身につくの?
研究では、受験勉強や座学と比べて、総合的な能力が必要です。 このため、研究に熱心に取り組めば取り組むほど、以下のようなスキルを身につけることができます。 (これらを身につけずして大学を卒業・修了するなんてもったいない!) 本研究室では、これらの能力が身につくように指導します。 なお、音声認識や音声対話など、その分野の知識がつくことは当然ですので、明示的には書いていません。
- 計画力 計画や見通し(見積り)なくして研究はできません。PDCAは必須です。
- 説明力 ミーティングでは、やった実験を他人に正確に伝える能力が必要です。新しい、誰もやっていなかったことを、 それを知らない人に正確に伝える能力です。
- プレゼンテーション能力 研究成果を発表する際に必要です。就職活動にも直結するでしょう。 どう見せるかというHow-toのことだという誤解があるかもしれませんが、どう整理し、どういう順番で、何を説明するかというWhatが鍵です。
- 日本語表現能力 今までまとまった分量の日本語を書いたことがある人は少ないのではないでしょうか。 論文執筆は、自分が書いた文章を他人が添削してくれる貴重な機会です。 書けるようになるには、まず書き方の本を読んだうえで、たくさん論文を読んでください。 レポートのように「とにかく書けばいい」という文章ではなく、「読んでもらえて内容が伝わる」文章の作成を目指します。
- 論理的思考力 実験の計画をする場合でも、この能力は必須です。例えば、「漏れなく場合分けした条件で実験を行うこと」などです。 論文は当然論理的に書かなければなりません。ジャーナル論文に投稿すると、査読者からの指摘に論理的に回答する必要があります。
- 英語力 国際会議にチャレンジすれば、自分が書いた英語をチェックしてもらえる機会を得ます。 採択されれば、スピーキングを練習する機会も得られます。ある意味、チャレンジした学生の特権です。
- よくわからない問題を定式化する力 研究は、答がそもそもあるかどうかすらわからない問題に対して、一定の客観的な解を出すプロセスです。 実社会では、受験勉強とは異なり、正解が与えられている問題をいくら解いても新たな価値を産みません。 答のわからない問題に取り組む方法論を学び取ることが、研究を通じて学ぶべきことです。
上記は他の研究室でも身につけることができるかもしれません。しかし我々の研究室では、 自然言語を用いたコミュニケーションを研究対象としている分、正しい日本語表現や誤解を招かない表現方法に、 こだわりを持ちたいと思っています。
また、研究分野の大枠は人工知能であり、一般的な工学よりも「柔らかい」です。その分、 なぜそれをするのか、そんなことをして何になるのか、といったストーリー(説得力)が必要になります。 こういう能力は、就職活動や、その後の社会人としてのプレゼンテーションでは必須です。
3. こんな学生に来てほしい!
まだまだ成長したい学生を募集しています。
私はこれを「実力値の二次微分の係数がプラス」と呼んでいます。学生の皆さんは伸び盛りですから、実力値の一次微分がプラスなのは当然です。
ですので、(仮に現在のスキルが低くても、)今から加速的に伸びる、伸びたいと思っている学生に来てほしいです。
以下のような人(もちろん全てでなくてよい)を待っています。
- 話し相手になるロボットを作りたい
- 「話が通じる」とはどういうことかに興味がある
- ロボットと話せると楽しいと思う
- プログラミング能力を生かしたい
- とにかくガッツがある
- 新しい研究グループで、いろんなイベントを立ち上げたい
- 博士号を取れるくらい研究をやってみたい
- 迷ったらとにかく進む方がよいと思うタイプである
- 論文を書いて、国内や海外に出張に行きたい
- ↑これにより授業料のモトをとりたい
- 夏休みに企業の研究所にインターンに行きたい
- 他大学の学生とも切磋琢磨したい
- 学会で賞を取りたい、自分の努力をカタチにしたい
- etc...
4. よくある(かもしれない)質問
Q. 学生の数が少ないように見えるのですがなぜですか?
本研究室は産業科学研究所に所属しており、工学部では協力講座という位置づけであるため、 学生の数は工学部所属の研究室の約半分です。 これは逆に言うと、「教員と学生の数の比が通常の2倍」を意味し、単純計算で、教員から通常の2倍の指導を 受けられることになります。 つまり、向上心のある人には、2倍オトクな研究室だと私は思います。 一方で「楽に卒業・修了したい」というだけの人には全くオススメしません。
Q. 「研究」と言われてもイメージが湧きません。3回生までと何か違うんですか?
受験勉強を含む3回生までの勉強は、今までに明らかにされたことの習得が主眼です。
つまり方向性としてはインプット重視です。
一方で研究とは、未知の課題に取り組むことです。これは答のある問題を解くのとは全く異なり、
新たなアウトプット(創造・発見・提案)を行うことが主眼です。このように方向性が全く逆です。
社会で求められるのは明らかに後者です。
問題集をひたすら解いているだけの人や、資格を取るために勉強しているだけの人に、給料を払う会社なんてないですよね?
つまり研究室に入る4回生という時期は、アウトプットが初めて要求され始めるという意味で、皆さんにとって大きな転換期です。
受験勉強での成功体験からか、「勉強=テストで点を取れるよう暗記すること」と思っている人は危険です。
そして、鋭い人はお気づきだと思いますが、アウトプットのトレーニングには、自分のアウトプットに対して指導を受ける必要があります。
英語のライティングやスピーキングの練習を想像してみてください。
この転換期にしっかりと指導を受けたい人にとっては、我々の研究室は良い選択肢だと私は思います。
Q. 場所は遠いの?研究室が産研所属だとどう違うの?
1点目の場所については、電気系のE棟群から見て、道を挟んだ向かい側(北側)です。
情報科学研究科の建物と比べても別に遠くはありません。
2点目については、学生の皆さんに特に影響はありません。
上で述べたように、学生の数がやや少ないことと、少しだけ建物が離れていることくらいです。
一方で、産研独自のイベント(産研フェスタやジンギスカンパーティ)があります。
また昨年度本研究室は参加していませんが、フットサル大会も開催されています。
Q. 研究室の拘束時間は長いですか?
「拘束」するつもりはありませんが、研究を着実に進めるための習慣作りは必要です。 自らを律する力が必要です。 研究室に来ないのに研究が進むことはありませんし、大学でスキルを身につける貴重な機会を逃していることになります。 また、研究室に来ても誰もいないと、楽しくないですよね?
なお、課外活動や部活動については、相談があれば考慮します。もちろん、その場合、都合のつく別の時間にリカバーを図ることは必須です。
Q. プログラミングはできないといけないの?
はい。もちろんできる方がよいです。ただ英語などの他のスキルと同様、さらに鍛えようとすることが重要です。 実践的に使わないと身につきません。 得意な人にとっては、その武器を生かすチャンスです。
Q. 週間の行事予定はどんな感じですか?
全体ミーティングとグループごとの詳細なミーティングを、
それぞれ週1回程度行います。また、配属当初は新人向けトレーニングを実施予定です。
自主的な勉強会も大歓迎です。
また、週に1回、昼食会も実施しています。
一方、7月上旬以降は、院試を受験する4回生には、院試勉強に集中して取り組む期間を確保します。
Q. 就職先は?
研究室で就職先を斡旋することはありませんので、「この研究室だから」という就職先があるわけではありません。
就職ガイダンスは学科・専攻単位で行われます。⇒
学科卒業生の就職先の例
もう少し最近の就職先(コース紹介Youtube内)
ただ、就職先を見つけることは通過点であり、ゴールではないことは明らかです。どこへ行ってもやっていけるよう、上述のスキルを
研究室で鍛えましょう。
言われたことをやるだけではなく、自分で考えて判断できる力をつけることが重要です。
Q. どんなイベントがありますか?
新歓や追いコン、院試の壮行会や慰労会、忘年会など、各種の飲み会があります。
さらに所属する産業科学研究所で、産研フェスタ(7月)やジンギスカンパーティ(10月)などのイベントもあります。
(コロナ禍により中止や開催形態変更を余儀なくされていますが、再起動しましょう!)
新たな企画も随時募集中です。「よく遊び、よく学べ」です。段取りできるスキルも重要です。
また、関西音声合同ゼミという、他大学の研究室と交流する機会もあります(7月、12月ごろ)。
学会にも積極的に参加(発表)しましょう。
Q. 他大学の学部生です。音声対話の研究をやりたいのですが。
はい。出身大学を問わず、音声対話に興味があり、やる気のある学生は大歓迎です。まずは連絡をください。
本研究室に入るには、工学研究科 電気電子情報通信工学専攻の、情報通信工学コースを志望してください。
博士後期課程からの入学についても相談してください。
5. 見学情報
研究室の場所は,このPDFファイルがわかりやすいです.
4回生向け研究室見学
4月6日(木)7日(金)に実施します.
会場は産研ナノテク棟2階N202号室です.
大学院進学説明会
2023年度の大学院第1回大学院進学説明会は3月6日(月)にあります。
https://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/entrance/g_admissions/2023_3/
研究室見学も実施予定です。
(3/24追記)
第2回は5月1日(月)にあります。
https://www.eng.osaka-u.ac.jp/ja/entrance/g_admissions/2023_45/
同時開催のいちょう祭のデモを兼ねて,産研講堂で実施予定です。
大学院入試情報
- 【工学研究科のページ】 募集要項などの情報がある.
- 【電気電子情報通信工学専攻のページ】 筆記試験科目や過去問の情報などがある.
6. 教授はどんな人?
学部の講義で会う機会がほぼないので知らないと思います。是非一度話しに来てください。
メールで事前にアポイントメントを取ってください。オンライン面談も可能です。
アドレスは komatani あっと sanken.osaka-u.ac.jp です。
研究テーマも大事ですが、指導教員と「合う/合わない」も重要な要素だと思います。
以下は参考になるかもしれないと思い、置いています。
(比較的)一般向けの文章
人工知能学会の編集委員をしていた時に、「今年の抱負」と題して、自由に書かせていただいたものです。
- 「人間のようなターンテイキング」 人工知能学会誌 28巻第1号, p.22 (2013年1月)
- 「単に感情を表出する発話」 人工知能学会誌 26巻第1号, p.20 (2011年1月)
その他プロフィール
教授は体育会ボート部出身です。国体にも出ました。その後ボート部のコーチ経験も長いです。
一方、中学高校では吹奏楽(打楽器)をやっていました。普門館への出場経験もあります。
7. 参考サイト
研究室の選択は、まず最初の就職活動です。
外部サイトですが以下も参考にしてください。
- 大学院修士向け研究室情報チェックリスト
- 大学院修士学生がしておいたほうが良いこと; ジャーナル論文に挑戦しよう!