機能オントロジーに基づく工学知識の体系化と流通支援


機能表現と機能理解

人間の人工物の理解においては「機能」概念が中心的役割を果たしている. ある部品を理解する際には,その部品において変数の値がどのように時間的に 変化するか(例えば,温度が減少する)ということだけではなく,その部品が 「どのような役割を系において果たすのか」といった「機能」に関する知識が 必要である.機能概念は説明生成タスクに必須であるだけでなく,故障診断や, 後述するように設計行為においても重要な役割を果たす.このような機能概念 に基づいた対象モデルを「機能モデル」と呼び,AIのひとつの研究分野を構成 している.しかしながら,機能とはなにか,という基礎的な疑問にもまだ合意 がない状況である.また,記述されている機能モデルは対象に強く依存してい るものが多く,適切な抽象度において概念化されているものは少ない.

本研究では,まず,機能とはなにかという根本的疑問について深く考察を 行い,機能と振る舞いとの違いを有限個のマッピング・プリミティブで表現す る機能表現言語 FBRL を提案している.さらに,FBRL を用いて,一般的な機 能を表す概念集合である機能オントロジーを定義している.下図はその一部分 である.また,それらに基づき,振る舞いから機能を同定する「機能理解」タ スクに取り組んでいる.対象領域としては,当初から扱ってきた発電プラント から,現在,化学プラントや生産プロセスにも適用を行っている.

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機能オントロジーの機能概念(部分)

 

主要論文

  1. 設計とオントロジー,日本学術会議 50周年記念シンポジウム「設計の質的転換」,1999年5月(掲載予定).
  2. Meta-Functions of Artifacts, Proc. of The Thirteenth International Workshop on Qualitative Reasoning\ (QR-99), June 6-9 1999, Scotland, Forthcoming
  3. Functional Ontology for Functional Understanding, Proc. of QR'98, 1998
  4. 機能と振舞いのオントロジーに基づく機能モデル表現言語 FBRL の開発, 人工知能学会学会誌, Vol.11, No.3, pp.420-431, 1996
  5. FBRL:A Function and Behavior Representation Language, Proc of IJCAI-95, 1995
  6. 再設計支援のための動的システムの機能理解について, 第14回設計シンポジウム講演論文集, pp.64-71, 1996


知的設計支援

設計問題は実現したい機能の記述を与えられてそれを実現するような構造 を同定する問題であり,本質的に機能分解などの機能レベルにおける推論を含 んでいる.現存する人工物を与えられてその改良を行う再設計問題について考 えると,与えられた人工物の個々の部品が全体の中で果たしている役割,すな わち機能を理解する必要がある.例えば,生産プロセスの塗装工程において空 気圧の低下による塗りむらという問題に対して,普通に考えると空気圧を生成 するコンプレッサーを増強するところであるが,なぜ塗装が必要なのかをいう ことを理解すれば,前工程での野外保管を屋内保管に変更することで問題を解 決することができる.このような再設計を行うためには工程の存在理由,すな わち工程の機能とそれらの間の関係を明確に表現する手法と,計算機が機能を 同定する枠組み(機能理解)を構築する必要がある.しかしながら,従来の研 究においては振る舞いと機能空間のマッピングを規定する軸が同定されていな いため探索空間が広くなり,機能理解タスクを実現することができていなかっ た.

本研究では,2で述べた機能記述言語 FBRL と機能オントロジーに基づい て機能理解を実現することで,機能レベルにおける再設計を行うことを目指し て研究を行っている.下図に示すように,与えられた振舞いモデルを機能理解 して機能構造を同定し,機能レベルにおける再設計を行う.機能オントロジー を語彙として用いて高い抽象レベルにおける再設計方策知識(工程の排除や主 体の共有など)を用意し,部品の機能とそれらの間の関係に基づいた再設計を 行う枠組みを構築している.また,一般に従来見られなかった革新的な設計を 「発明」と呼ぶが,結局のところ探索空間の範囲と質に帰着させて捉えること ができる.抽象化され体系化された知識を用いることで,大きなギャップを乗 り越える発明的設計を可能にする枠組みを目指す.

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図:機能理解に基づく再設計支援システムの構成

 

主要論文

  1. Towards Redesign based on Ontologies of Functional Concepts and Redesign Strategies, 2nd International Workshop on Strategic Knowledge and Concept Formation, Iwate, Japan, October 20-22nd, 1999. Submitted.
  2. 設計意図を考慮した生産工程再設計システムの検討, 1997年度人工知能学会全国大会, pp.565-568
  3. Towards Redesign of Manufacturing Processes based on Functional Understanding, AI in Design '98

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